囁かれる「新銀行東京」国税注入の動き

執筆者:鷲尾香一2008年2月号

中小企業救済のためと、鳴り物入りで開業したが、“処理”が近いとの声も。姑息なことが嫌いな石原都知事の頭にはどんな方法が?「早ければ春にもケリをつけるようだぞ」 昨年末、開業から三年も経たない銀行の“処理”をめぐる情報が金融界を駆けめぐった。石原慎太郎・東京都知事の肝煎りで設立された「新銀行東京」のことである。開業は二〇〇五年四月。本誌(〇五年十一月号)が詳報したように、民間との出資交渉が難航した結果、都が税金を使って出資した一千億円が資本金全体の八五%を占める官業銀行だ。 勇ましい船出とともに「資金調達に悩む中小企業の救済」を掲げたが、新銀行の開業時にはすでにメガバンクや地方銀行が金融庁の指導により中小企業融資に取り組んでいた。加えて、この分野は「もっとも厳しい激戦区。将来性のある企業には、とっくに民間金融機関が目をつけている。ノウハウもない後発銀行など素人も同然で入り込む余地はなかった」(ある信用金庫の幹部)。 実際、業績は悪化する一方だ。経常利益、最終利益とも開業からこのかた大赤字続き。その結果、累積損失が資本金の八割近い九百三十六億円(〇七年九月中間決算)にまで膨らんでいる。三年足らずでこの“実績”は極めて異常な事態であり、このままでは早晩、資本金を食い潰して債務超過に陥るだろう。官業銀行の“処理”が耳目を集める所以である。

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