外交は“トライラテラリズム”の時代に

執筆者:田中明彦2008年3月号

 かつて二国間外交こそが外交の真髄であると言われた。ある種の問題について、特命全権大使と特命全権大使が必死の交渉を繰り広げる。これが外交だというわけである。今でも、外交の多くは、二国間関係である。 しかし、最近ではマルチの外交すなわち多国間外交もまた大変重要であると言われるようになってきた。国連はまさに巨大な多国間外交の場だし、貿易や金融をめぐる交渉も多国間のものが多い。G8サミット(主要国首脳会議)にしても、東アジアサミットにしても、多数の国の首脳が一堂に会して会議を行なうことで外交を進めることになる。 というわけで、外交といえば通常二国間外交と多国間外交に分けられる。しかし、この二つの間に、最近、中間的な形態がしばしば見られるようになってきている。典型的には三国間外交である。もちろん、定義からすれば三国間外交も多国間外交の一種ではある。したがって、三国間外交は二国間外交に比べると、三番目の国を意識せざるを得ないという面でより複雑である。しかし、三国間外交は、十カ国や二十カ国もの国が関係する多国間外交ほどは多くの国を相手にしているわけではないので、個別的な交渉という側面も時に強くでる。

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