世界最大規模の国際小口貨物輸送会社である米UPSが、宅配便最大手のヤマトホールディングス(HD)の買収を検討している。「宅配便など日本特有の小口貨物のノウハウの取得に加え、伸長する中国や東南アジアなどアジア圏をカバーする子会社として活用する」(大手投資銀行幹部)のが狙いだという。 昨年八月、ヤマトHDは、「宅急便」をテコにヤマトを売上高一兆円の大手運輸会社に育て上げた故・小倉昌男氏の長男・康嗣氏が海外留学すると発表した。ヤマト内では「グループの中核であるヤマト運輸の社長まで務めさせたが、目立った成果も出せなかったこともあり締め出された」と囁かれる一方で、「経営路線をめぐって生え抜きの幹部との意見が合わなかった」とお家芸の「内紛」が表面化した結果だとの指摘もあった。こうした事情を知ってか、日本でも事業展開中のUPSはヤマトの買収を視野に入れた。 UPSの売上げ規模は四兆円超、従業員は四十二万人。現在のヤマトHDの株式時価総額は七千億円足らずで「株式交換による三角合併を実施すれば簡単に傘下に入れることができる」(大手証券アナリスト)。 ヤマトHD内部では「宅急便の強化を主張する国内派と、頭打ちの国内強化よりも中国を中心とした海外事業強化を主張する派閥が対立している」(ヤマトHD幹部)という。最大のライバルである日本郵政は国際郵便で中国郵政や山九と提携、国内でも日本通運と不振にあえぐ宅配便事業の統合を打ち出すなど、M&A(合併・買収)や提携戦略を積極的に展開し郵便事業のてこ入れを進める。ヤマトHDも収益の柱である宅配便への過度の依存から脱するために日本郵船と資本・業務提携したが、成果は出ていない。

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