世界的に軍事戦略を拡張するロシアが、北方領土を含む極東でも軍備近代化を強化している。ショイグ国防相は3月25日、クリル(千島)諸島に新型の地対艦ミサイル、バスチオン(射程300キロ)とバール(同130キロ)、偵察用無人機を年内に配備すると発表した。カムチャツカ半島の海軍基地にも昨年、ボレイ級の新型戦略原潜、「アレクサンドル・ネフスキー」が配備されたばかり。欧州、中東方面に続き、極東でも米国に対抗する構えだが、経済危機さ中の軍備拡張路線は尋常ではない。

択捉にミサイル配備か

 同国防相は千島列島のどこに地対艦ミサイルを配備するか言及しなかったが、軍事基地が置かれているのは択捉、国後両島だけで、択捉島と思われる。択捉には第18機関銃砲兵師団(約3000人)、国後には第46機関銃砲兵連隊(約1000人)が駐留し、いずれも日米両軍の上陸阻止を想定した島嶼防衛の地上部隊だが、攻撃型戦力が初めて配備されることになる。バスチオンは沿海地方の部隊に配備されているだけで、極東では2カ所目。北方領土の実効支配を強化するとともに、日米の艦船、ひいては中国艦船をけん制する狙いもありそうだ。

 ショイグ国防相はまた、太平洋艦隊が4月から千島諸島の海上探査を3カ月間実施し、新基地の選定・建設に着手すると述べ、千島に初の海軍基地を建設する意向を示唆した。これに関して、上院国防安全保障委員会のオゼロフ委員長は「クリルの軍事・戦略的重要性は高い」とし、千島諸島に何隻軍艦を配備するかは、日本や他のアジア諸国との関係次第だと語った。

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