7月22日、ミュンヘンで起こった銃乱射事件の現場から避難する人々 (C)AFP=時事

 7月22日にドイツ・ミュンヘンのオリンピア・ショッピングモール(Olympia Einkaufszentrum)近くのマクドナルドで起こった銃乱射事件は、移民を奨励してきた西欧の社会が抱えたねじれた問題を明らかにした。また、ヨーロッパと中東との込み入った関係も示している。

犯人の特異な動機と背景

 犯人と見られる18歳のイラン系ドイツ人のアリー・ソンボリー(Ali Sonboly)が、犯行後に自殺した遺体で発見されたという情報が入った時点で、「イスラーム国」あるいはアル=カーイダなどグローバル・ジハード組織に感化された、あるいは指令された可能性はほぼ排除された。自爆や、治安部隊との銃撃戦によって「殉教」するのではなく、逃亡して人知れず自殺を選んでいる時点で、ジハード主義者の行動パターンとは異なる。

 また、グローバル・ジハードはスンナ派の政治思想と組織論であり、大多数がシーア派であるイラン人の参加者は極めて少ない。グローバル・ジハードは、宗教解釈を統制する中央機構がなく、各信者の自発的な篤信行を社会的に奨励していくスンナ派の特性を生かして展開してきたものである。

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