システム障害でわかった「信金中金」の病原

執筆者:鷲尾香一2008年6月号

実は優良金融機関。しかし、決済の集中日に起こった大システム障害で、天下りトップの無能ぶりが見事に露呈した。「うちのお客様が取引相手に送金しようとしても送れないので、私が直接お客様の取引相手に現金を届けに行ったんですよ。するとその会社が暴力団の関連企業で怒鳴られたり脅されたり……いやはや大変な目に遭いました」 苦虫を噛み潰したような表情でそう語るのは、都内のある信用金庫の職員だ。 二月二十五日、全国二百八十二の信用金庫が加入している全国信用金庫データ通信システム(全信金システム)が突然動かなくなり、七十四万件の送金ができなくなった。彼はその大規模なシステム障害のいわば“被害者”である。 全国の信金は、この全信金システムを通して為替決済(現金以外の決済)を行なっている。 信金から相手先口座にお金を振り込む場合、そのお金は電文為替という振り込みデータに姿を変え、全信金システムを経由して相手が口座をもつ金融機関に到着する。電文為替を受け取った金融機関は相手先口座に現金を入れ、これで振り込み完了。金融機関同士の現金の決済は後日行なう。今回は肝心の全信金システムが麻痺したために、振り込んだはずの現金が口座に入っていないというトラブルが発生したのだった。

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