8月1日、論文不正の内部調査結果について記者会見する東京大学。内容は到底納得できるものではなかった(光石衛副学長=右=ら) (C)時事

 

 2015年6月、東京工科大学の教員が研究室内で首つり自殺した。このことを『FACTA』9月号が報じた。

 私は、この事件は、我が国の大学が抱える構造的な問題を象徴していると考えている。本稿では、これまでメディアがあまり取り上げてこなかった、この問題について論じたい。

再雇用の撤回

 自殺した教員はメディア学部の特任講師だ。2012年10月、就職指導を担当する教員として採用された。任期は3年間だ。

 多くの大学では、このような有期雇用の職員の場合、任期最終年度に業績が評価され、雇用を延長するか否かが決まる。

 この職員の場合、2014年10月に大学の人事委員会が評価し、「高得点の評価」(関係者)で、さらに3年間の任期延長が承認された。

 しかし、ここから事態が急展開する。3カ月後の2015年1月、当時のメディア学部長が「3年延長の契約はなくなった」と教員に伝えてきたのだ。この職員が不祥事を起こしたわけではない。教員が学部長に抗議し、「労基署にいく」と伝えたところ、4月には再び任期が延長されることとなった。

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