中国経済「白酒の宴」は2018年中に終焉となるか

執筆者:後藤康浩2018年1月31日
習近平国家主席の顔に憂色が浮かぶのもそう遠い日ではない? (C)AFP=時事

 

 この数年の中国経済の振幅は激しかった。成長率低下と外貨準備高減少に苦しんだかと思えば、昨年は成長率が6.9%と7年ぶりに前年比で上昇し、外貨準備も1294億ドル増加した。一見、明るい材料にも見えるが、財政支出の増加と資本規制の強化でもたらされた見せかけの“好転”に過ぎない。アクセルとブレーキを細かく踏み換える中国的経済運営の典型だが、多くの専門家が指摘するように、中央と地方の政府債務や国有企業の借金、銀行の不良債権の膨張は加速している。その様子は、酔客が景気よく大声をあげ、乾杯を繰り返しながら白酒(バイジュウ)の空瓶が卓上に積み上がっていく中国の宴会さながらだ。中国の“白酒経済”の宴がお開きになるのは、今年かもしれない。だが、誰が支払いの“伝票”を採り上げるのだろうか。

「新常態」が「新時代」に

 2010年の10.4%から16年の6.7%まで6年連続の「横ばい・低下」が続いてきた中国の成長率が、昨年は反転して上向くことは、秋にはほぼ予想されていた。中国の製造業PMI(業況感を捉える指標=購買担当者指数)は2016年10月以降、景気拡大を示す51%以上を続けており、素材、エネルギーから製品まで、各産業分野で増産が続いていたからだ。やはり有力な牽引役は石炭と鉄鋼。中国は環境汚染対策の柱として「脱石炭」を掲げ、天然ガスへの転換を強引に進めるとともに、非効率で炭質も悪い中小炭田を相次ぎ閉鎖してきた。中国の石炭消費は2013年をピークに3年連続で前年比マイナスとなったが、2017年には再び増加に転じた。1~10月の全国の石炭消費量は、前年比3.7%増の32億6000万トン。11、12月は天然ガス不足で、閉鎖していた石炭火力発電所を再稼働させたため、石炭消費量はさらに跳ね上がった。過剰な鉄鋼生産の削減を世界から迫られ、減るはずだった粗鋼生産も増加に転じた。中国の鋼材需要は昨年7億2500万トンと前年比7.7%増になった模様だ。

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