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 戦争遂行のため、それまで国民生活に必要な財の生産に使っていた資源を、武器や弾薬の生産に振り向けなければならない。どうすれば良いか?

 計画経済であれば、そのように生産計画を切り替える。そして国民への配給量を削減する。

 市場経済の国では、まず増税を行う。

 しかし、それだけで戦費を賄うのは、難しい。そこで国債を発行する。国民が貯蓄で購入してくれればよいが、限度がある。そこで外債を発行して外国から借りる。日本は、日露戦争において、この方法に大きく頼った。しかし、これにも限度がある

 そこでどうするか? 国債を中央銀行に購入させるのだ。

 中央銀行は紙幣を増発して国債を購入する。

 紙幣は中央銀行の負債とされている。国債という資産が増えて、紙幣という負債が増えるのだから、バランスシートの均衡は保たれている。

 金本位制の下では、紙幣は兌換券であり、要求に応じて金に換えなければならない。したがって、いくらでも紙幣を発行するわけにはいかない。

 しかし、金本位を離脱した場合には、兌換義務はない。つまり、中央銀行は、「返済義務のない負債」を負うことができるわけだ。こうした奇妙なことができるのは、世の中で中央銀行だけである。

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