9月18日、長野市で開かれた総裁選の支援集会で、聴衆と握手する安倍首相。その手は本当の貧困層にまで届いているのか (C)時事

 

 9月20日の自民党総裁選をにらみ、国民の求心力を高め、自民党内での地盤を強固にするための発言だろうが、このところ安倍晋三首相のアベノミクス政策の成果に対する誇張した発言が目立っている。特に“貧困と格差”に関連した発言は、実態と大きく乖離したものが多く、そのいい加減さが際立っている。

「格差は改善」と強弁

 国会でも野党から度々、貧困と格差問題に関する追及を受けていた安倍首相は、8月末の福井県での講演でも、「(17歳以下の子どもの貧困率は)ずっと悪化してきたが、安倍政権になって初めて2ポイント改善された。安倍政権で格差が広がったというのは誤りだ」とアベノミクス政策の成果を強調した。

 この発言のベースとなった統計は、おそらく昨年6月に厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査」の相対的貧困率だと思われる。同貧困率は、第2次安倍政権が発足した2012年(発足は12月)の16.1%から2015年には15.7%に、子どもの貧困率も同様に16.3%から13.9%と確かに2ポイント程度減少している。その点では、安倍首相の発言は間違いではない。しかし、この貧困率には重大な問題があり、それが言わば貧困率が改善しているように見えるカラクリなのだ。

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