父親の子育てに関する企業の誤解には、大きく三つある。第一に「開始時期」の誤解だ。子育ては妻が妊娠した時点から始まっている。だが、夫はもちろん企業側も、配偶者の出産が子育ての「開始時期」だと捉えている。お腹が大きくなっていく中で、妻は徐々に「母」になっていくが、多くの夫は「父」になる準備不足のまま出産に直面する。 こうした「子育て」に対する認識ギャップが大きいと、夫婦の間に亀裂を生んでしまう。妻が文句を言うのは、期待の裏返しだと夫は受け止めればいい。話し合いの中で子育てについて相互理解を深めるチャンスと前向きに捉えるべきだ。そうすれば「雨降って地固まる」となる。 一方、妻の文句に夫が逆切れするのは最悪のパターンだ。早期に修復しないと、「雨降って土砂崩れ」になりかねない。 これは当人のみならず、企業のリスクでもある。赤ん坊を授かるという「夫婦の試練」を乗り切れば、家庭の基盤は強固になる。家庭基盤の強弱は、仕事に如実に表れる。夫婦の絆が強ければ強いほど、安定して仕事に打ち込むこともできる。 企業の第二の誤解は「終了時期」だ。子育ては乳幼児期が特に大変だと思われやすく、多くの企業は三歳までの施策しか用意していない。だが、一部の先進企業では、親が迎えに行く午後六、七時(地域によって異なる)まで子どもを預かってくれる保育園よりも、早ければ午後一時に子どもが帰ってくる小学校入学後の方がかえって放課後の「空き時間」への不安が大きいという認識が徐々に広まっており、短時間勤務制度を小学校六年生まで拡充する動きもある。

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