「自主独立」の意味にとことんこだわっていく(左・細谷雄一さん、右・篠田英朗さん)(撮影・廣瀬達郎、以下同)

細谷雄一:イラク戦争の後に、あるアメリカ人の外交専門家が、『ザ・サイレンス・オブ・ラショナル・センター』というおもしろい本を書いています。これによると、「ラショナル・センター」、すなわち「合理的な中道派の人たち」は、世の中で起きている問題についてほとんど発言しない。発言すればたたかれることがわかっていますから、発言しないことが合理的なんですね。合理的で理性的な人は、世の中にいろんなおかしいこと、間違っていることがあるとわかってはいますが、批判されたくないから沈黙する。これを続けていたら大変なことになる、というのがこの本の警鐘で、私はタイトルも含め、非常に強い印象を受けた。

細谷雄一さん

 

 これは日本でも起きていると思います。私の周りの「合理的」な国際政治学者はだいたい、私みたいな政治的な発言はあまり行わない。黙っているほうがたたかれなくていいですからね。安保法制のとき、私は何名かの友人から、自分はたたかれたくないから発言しないけど、細谷さんはたたかれても大丈夫だろうからどんどん発言してください、という励ましをたくさんいただいたんです。それで頑張ろうと思って発言していたんですが、やっぱり沈黙が巨大になることは怖いことだと思うんですね。

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