演説中のトランプ大統領(ホワイトハウスの公式HPより)

 

 2月5日夜(現地時間)に行われた今回のドナルド・トランプ大統領の一般教書演説は、2017年の就任演説で世界に衝撃を与えた「アメリカは殺戮に遭っている」(American Carnage)というような極端に刺激的な内容は影を薄めた。

 すでに昨年2018年の一般教書演説の際、準備されたテキストを読み、極端なアドリブ発言が姿を消し、安定的で現実的な演説になったと評価されていた。では、今年と昨年との違いは何か。

 それは、トランプ大統領が昨年11月の中間選挙において下院で過半数を失い、民主党の協力なしには法律が作れなくなったという政治状況の変化が1つ。そして、ジョン・ケリー大統領首席補佐官、ジェイムズ・マティス国防長官といった軍出身のリアリストが解任同様の辞任に追い込まれ、彼らの影響から自由になったことで、トランプ大統領の持論である中東からの米軍の撤退をメインに据えることができることになった点と言える。

 トランプ大統領は、超党派の協力と、アフガニスタンやシリアからの軍の撤退を民主党議会に訴えた。では民主党がトランプ大統領に歩みよる余地があるのかと問われれば、ほとんどない、というのが大方の見方だ。なぜなら、これまでのトランプ大統領の政策と態度は、むしろ米国の分断を煽るもので、だれも大統領の言葉を信じるムードにはない。

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