「集計が出ました。あらゆる開催地のあらゆる関連投資を合わせて、約一兆三千億元(約十九兆三千億円)でした」 中国筋は明言した。招致決定の二〇〇一年から八月二十四日に閉幕するまで、中国は北京五輪に途方もない金額を投じていた。総支出額を伝えた内部文献は、機密指定に加え、(1)一切、口外してはならない(2)金額について議論や異論は一切、許さない――と指示しているという。 五輪収支につき、中国は一貫して「黒字」を強調してきた。招致時には総収入・総支出とも十六億ドル強で「収支とんとん」と申告。招致決定後、九・一一米同時テロが起きテロ対策費の大幅増額などから総支出は二十二億ドル(約二千二百億円)まで膨らんだが、一方でスポンサー料や放映権料も想定以上となり、「黒字になるのは、ほぼ間違いない」と魏紀中・北京五輪経済研究会会長は八月二十一日の会見で強調していた。 だが、魏会長や中国の公式報道が伝える収支決算は、会場および大会運営に限定した直接支出のみ。社会基盤整備などを総計すれば、北京市だけで二千八百億元(約四兆円)余りを投じたとも公表している。ケタ違いのさまざまな数字が乱れ飛ぶのは、ベースが違うからだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。