「米中貿易戦争」下の地政学リスク(下)

執筆者:フォーサイト編集部2019年10月7日
トランプ大統領(左)と習近平主席(右)の握手、その指にこめられたものは―― (C)AFP=時事

 

蟹瀬誠一:日中関係についてもお話をしていただきたいと思います。川島さんは、日中の新しい可能性が生まれてくるということをおっしゃっていますが、それは具体的にはどういう形になってくるんですか。

川島真:その前に、一国二制度について一言だけ。

川島真氏

 一国二制度はもともと台湾のために準備されたもので、そこに香港を入れ込んでいるというのが中国側のスタンスですので、一国二制度が香港で破綻すると、台湾政策は根本から練り直しになるんですね。習近平はその練り直しをしていたわけですが、その最中にこんなデモが起きてしまったので、相当きついと思います。

 話を戻して日中関係ですけれども、新しい局面については、いろんなことが考えられると思います。「一帯一路」で中国が行っている第三国協力など、そうかもしれません。

 というのも、中国は今「一帯一路」で行き詰っているわけです。例えばラオスやカンボジアのような低開発国は、本当に資金が欲しいので資金をたくさんくれる中国がいいのですが、中東欧の16の国などは、「中国はもういい」と言って、会議にトップレベルが参加しなかったりしています。チェコはもともと中国の資金は要らないと言っていますし、スロバキアでさえ中国に段々そっぽを向き出している。東欧だと、中国べったりなのはハンガリーとモンテネグロぐらいですね。

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