イスラエル 内情複雑だからこその奮励

執筆者:吉岡良2008年12月号

[エルサレム発]今年、日本はノーベル賞で大いに盛り上がった。物理学賞と化学賞で一年に四人の受賞が決定(現在は米国籍の南部陽一郎氏も含む)。日本では一九四九年に湯川秀樹氏が物理学賞を受賞以降、わずか十六人のノーベル賞受賞者のうち四人が集中したのだから、フィーバーも当然と言えるかもしれない。 一方、日本人ではこれまで受賞者が一人もいない経済学賞は、ユダヤ系米国人のポール・クルーグマン氏への授与が決定した。ユダヤ系がノーベル賞を受賞するのは、一九〇一年の第一回以来、百七十八人目。これまでの全受賞者の実に二割以上を占めており、「ユダヤ人は教育水準が高い」という世界の“常識”を裏付ける結果となっている。 ところが、この歴代のユダヤ人受賞者の国籍に目を向けると、米国人が圧倒的に多く、「ユダヤ人国家」で暮らすイスラエル人はわずか八人。建国が四八年なのを割り引いても、やはり少ない。しかも八人中三人は「中東和平に尽力した」との理由で平和賞を授与された首相経験者だ。 とあるイスラエルの有識者はこの傾向の背景について、「ユダヤ人は伝統的に米国の研究機関との結び付きが強い。イスラエルの全大学の研究者の数を合わせても、米国の大学で研究に携わっているイスラエル人の数には及ばない」と説明する。また、建国以降、敵対勢力との戦争に明け暮れ、軍事関係部門以外では必ずしも研究に集中できる環境ではなかったという点も見逃せない。

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