昨年11月、上海で林鄭月娥香港行政長官(左)と握手する中国の習近平国家主席。「1国2制度3関税」はうまくいくのか (C)AFP=時事

 

 今回の「大湾区」の現地で感じたのは、中国経済の成長が以前に比べて鈍化してきているといわれながらも、いまだ新しく発展し、ダイナミックに動いている地域が現実にあるということだった。

 一方で中国は、「デジタルレーニニズム」とも言われるように、AI(人工知能)やビッグデータなどの新しいテクノロジーを活用して、新たな国家や社会の運営を行おうとしている。

 それは新しい社会発展のモデルであり、社会における効率性や治安などの面で非常に効果の大きい面もあるが、社会や政治における自由さや闊達さを抑制するという面もあり、どの立場から見るかで、その功罪やメリット・デメリットが異なってくる。

 そのような点も踏まえ、「大湾区」の現在と今後について検討していきたい。

実験地域としての「大湾区」

「大湾区」には、「1国2制度3関税地域」が存在する。制度間の相克は、今香港で起きているデモと、それに対応する香港政府および中国中央政府との対応や関係性にも表れているといえる。

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