北朝鮮「外貨保有減少」と「注目人事」

執筆者:平井久志2020年2月24日
平壌の三池淵劇場で行われた旧正月記念講演を鑑賞(最前列左から崔龍海、金正恩、李雪主、金慶喜、金与正の各氏)。金慶喜氏の公式の場に姿を現したのは6年ぶり(『労働新聞』HPより)

 

 北朝鮮は2017年末から、国連による厳しい経済制裁に直面している。通常の国家であれば、経済的に極めて厳しい状況に直面しているはずだが、外部から見ると奇妙に安定している。1ドル=8000ウォン前後という為替相場や、コメ1キロ=約5000ウォンという価格に大きな変動がない。

制裁でも大きな混乱のない北朝鮮経済

 北朝鮮の貿易の90%以上は、中国とのものである。国連制裁は、北朝鮮の対中輸出の主な品目であった石炭、鉄鉱石、水産物、繊維製品などをすべて輸出禁止品目にしたうえ、北朝鮮の石油輸入にも制限を付けた。

 その結果、2018年の北朝鮮の対中輸出は前年比88%減、中国からの輸入は対前年比33%減であった。2018年の貿易はこのように縮小し、北朝鮮の貿易赤字は132億5000万元(約2117億円)に達した。約20億ドルの赤字である。

 北朝鮮がもともと閉鎖国家であり、経済全体に占める貿易の比重が通常の国に比べて小さいということがあるにしろ、通常の国家であれば、輸出が前年のほぼ1割にまで減少すれば経済はめちゃくちゃになるはずだ。しかし、そうはなっていない。

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