2月16日に開かれた新型コロナウイルス感染症対策専門家会議。奥から5人目が脇田隆字・国立感染症研究所所長 (C)時事
 

『犬神家の一族』(角川文庫)が好きだ。横溝正史の代表作で、名探偵金田一耕助が活躍する。1976年に市川崑監督、石坂浩二主演で映画化され、大ヒットした。その後、繰り返し映画化・ドラマ化されている。

 この作品は犬神佐兵衛翁の臨終から始まる。佐兵衛翁は裸一貫から犬神財閥を築いた立志伝中の人物だ。

 佐兵衛翁の死後、一族が揃ったところで開封された遺言書には、すべての財産を恩人の孫娘である野々宮珠世に譲ると記されていた。ただし、条件があった。それは珠世が佐兵衛翁の3人の孫のいずれかと結婚することだ。

 その後、財産をめぐって惨劇が繰り広げられる。ネタバレさせないためにこれ以上は書かないが、読み終わると、一連の惨劇は亡き佐兵衛翁の亡霊が犯人に取り憑いて起こさせたような印象を受ける。人は意識しないところで歴史に操られている、ということを考えさせられる作品だ。

 新型コロナウイルスの拡大が止まらず、政府は迷走を続けている。クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の検疫の失敗、遺伝子診断(PCR)の体制整備の遅れ、安倍晋三首相による突然の休校依頼――。

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