「価格戦争」「需要激減」続けば「備蓄満杯」「先物暴落」恐怖のシナリオ
2020年3月30日
あれは何年前の話だったのだろうか?
「サラリーマンの聖地」と称される東京・新橋のとある居酒屋のカウンターで、ライバル商社で石油開発を担当していた某氏と飲んでいた時の話だ。彼らは、アゼルバイジャンの生産開発大型案件の権益取得に成功したばかりだった。
「おめでとう、快挙だね」
僕は素直に誉めて、盃を上げた。
某氏はとまどいながら、応えてくれた。
「岩瀬さん、だけどね、見込み違いがあって、社内では褒められるだけでなく、責められてもいるんだ」
聞けば、長いあいだ石油関連業務に従事している某氏も僕も、確かに見落としていたポイントだ。
それは、パイプライン権益も同時に獲得しており、そのパイプライン内に残っている原油が膨大な量なので、資金負担が巨額に上る、ということだった。
カスピ海沿岸のアゼルバイジャンの首都バクーからジョージアの首都トビリシ経由、トルコの地中海側にあるジェイハン積出港まで伸びる「BTC原油パイプライン」は、1768キロメートルの長さがある。口径が42インチのパイプラインの全容量は、ほぼ1000万バレル(約160万キロリットル)だ。日本の総石油消費量の約2.5日分にもなる。
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