麻生太郎首相は今の経済危機を評して「百年に一度の不況」と連発している。ところが、その対策はどうかというと、とても百年に一度のものになっていない。昨年八月以来十二月までの対策を合計して、いわゆる「真水」は十二兆円。これは、一九九〇年代に行なわれた総合経済対策と比較して、質・量ともに同レベルの「並」の経済対策である。  百年に一度の経済危機といえば、ほとんどの人は実体験として知らないから、頼りになるのは歴史だ。一九三〇年代の大恐慌が大いに参考になる。もちろん、大恐慌の時代と現在では状況は異なり、歴史は同じように繰り返すわけではない。しかし、大恐慌以外に参考にするものがわからないのが実情なのだから、歴史に学ぼうとするのは当然のことだ。  大恐慌の特徴をいえば、(1)米国の景気後退(2)金本位制による金融引き締め、であった。一九二九年十月二十四日、後世では暗黒の木曜日として有名な日に、ニューヨーク証券取引所で株価大暴落があった。それが世界に波及したといわれているが、実際にはアメリカの株式暴落が世界大恐慌の原因ではなかった。  これは、プリンストン大教授だった米国FRB(連邦準備制度理事会)議長のバーナンキ氏らが一九九〇年代に明らかにしたことであるが、大恐慌になったかどうかは、その国がどこまで金本位制に固執したかどうかの問題だったという。

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