アメリカ大統領選の「下の部分」に思う

執筆者:徳岡孝夫2009年3月号

 朝の駅前の人の波に向かって、候補者が選挙カーの上から「よろしく、よろしくお願い」する。または選挙期間中に一度か二度、我が家の前を車が通って、スピーカーが「本人がご挨拶に伺っております!」と絶叫する。そういう風景を見慣れた人には珍しい、一運動員の米大統領選挙の体験記を御紹介する。 バラク・オバマが勝った。日本の新聞には予備選挙、党員集会、指名大会など選挙の「上の部分」が出るが、これは「下の部分」の話である。 本人の許しを得て名を出すと、ロビン・ベリントン氏。福岡と東京のアメリカン・センターの館長だったから、知る日本人も多いだろう。USIS(米国広報・文化交流局)を定年になってからは、ボランティアとして首都ワシントンの動物園で爬虫類の飼育係をしている。二年ほど前、カリフォルニアなんとかという大蛇に手を噛まれたが、沈着に振りほどいた。私とは四十年以上前に東北タイの密林で会った、古い友人である。毎年、年次報告が手紙で来る。 英語でcanvasはテント地や油絵の下地になるカンバスのことだが、これがcanvassingになると「投票を勧誘する」という意味になる。ロビンは昨年初頭、知名度でヒラリー・クリントンに劣るオバマのため、ボランティアの運動員としてキャンバシングを始めた。

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