「研修生切り」は日本の国家的汚点

執筆者:出井康博2009年4月号

 昨年秋からの急速な景気悪化によって、派遣労働者の失業が深刻化した。メディアも“派遣切り”として大きく取り上げ、非正規雇用を巡る制度の見直しが議論されている。 その陰で、同様に雇用を打ち切られながら放置されたままの存在がある。外国人研修・技能実習制度(以下、研修制度)を使い、アジアの発展途上国から来日している研修生たちだ。 研修制度は一九九三年、発展途上国の若者が日本で技術を身につけ、帰国後に母国で活躍してもらうことを目的として始まった。二〇〇七年には、この制度のもと来日した研修生が初めて年間十万人を突破。日本での受け入れ先は、中小の製造業者を中心に二万五千社に上る。そんな研修生たちに対し解雇が相次いでいることはほとんど知られていない。“研修生切り”と呼ぶべき事態だ。 彼らが呼び名通り、海外から招かれた大切な「研修生」であるとすれば受け入れ企業の業績悪化は彼らを母国に追い返す理由にはならない。日本が国家として枠組みを作り、相手国政府と合意した上で呼び寄せた存在なのだから、政府は支援策を講じるべきだろう。しかし、研修生は不況になったからと簡単に解雇され、政府も無視を決め込んでいる。技能修得中の「研修生」だからと低賃金で最底辺の仕事をさせ、景気が悪くなれば「労働者」が余剰だと“出稼ぎ外国人”扱いで真っ先に切る。国家として恥ずべき二重基準ではないか。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。