東京オリンピックから振り返る世界と日本(下)

執筆者:北岡伸一2021年10月23日
8月8日、東京五輪閉会式のフィナーレで、国立競技場には「ARIGATO」の文字が(C)時事

 オリンピックで目立ったのは、アジアの中で、従来からスポーツ大国として知られていた中国、韓国、日本以外の国々が台頭したことである。

躍進著しい東アジアの国々

 1つは台湾である。

 台湾の選手が柔道で初めてメダルを取った。台湾のように日本と縁の深い国で、なぜ初めてなのか、ちょっと不思議だった。野球でいえば、戦前の中等学校野球での嘉義農林の活躍は語り伝えられており、スポーツの伝統はあったのに、最近まであまり振るわなかった。

 1960年のローマオリンピックで十種競技銀メダルだった楊傳廣は、64年の東京大会で優勝候補だったが、体調を崩して5位だった。陸上競技の王というべき種目でアジア人が優勝できるのか、私は64年には大きな期待でテレビを見ていた。楊が体調を崩したのは本当に残念だった。

 その後、台湾は2004年のアテネ大会で初めて金メダル2(女子および男子テコンドー)を取り、そのほかに銀メダル2(男子テコンドー、男子アーチェリー団体)、銅メダル1(女子アーチェリー団体)を取った。2008年の北京大会では金1(女子重量挙げ)、銀1(女子重量挙げ)、銅2(ともに男子テコンドー)、2012年のロンドン大会では金1(女子重量挙げ)、銅1(女子テコンドー)、2016年のリオデジャネイロでは金1(女子重量挙げ)、銅2(女子重量挙げ、女子アーチェリー団体)だった。

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