EU離脱後のイギリス 重層化する分断と試練

執筆者:今井貴子2022年4月15日
パーティ疑惑に揺れるジョンソン首相(C)EPA=時事
 

 2020年1月にイギリスが欧州連合(EU)から正式に離脱して2年、移行期間終了からは1年余りが経った。

 離脱派が勝利した2016年の国民投票から完全離脱までの5年というもの、イギリスでは国論が離脱―残留で二分され、議会は機能不全に陥り、経済も打撃を受けたのだが、なんとか正式の離脱に漕ぎつけたことで、こうした事態には一応の決着がもたらされたのだろうか。 

 そして、ボリス・ジョンソン首相が謳いあげたように、イギリスは「グローバル・ブリテン」として新たな成功に向けて船出したのであろうか。

 しかし、これまでのところイギリスではむしろ離脱が生み出す難問が次々と顕在化してきている。まさにジョンソン政権の真価が問われる局面であるが、当のジョンソン首相への国民の評価はかつてなく厳しく、その眼差しには怒りすら込められている。

 EU離脱という歴史的な決断を経て、今のイギリスはいかなる試練に直面しているのか、以下ではその概要を見てみよう。

連合王国の一体性の揺らぎ

 第一の試練は、足もとの連合王国の一体性の揺らぎである。

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