林鄭月娥氏から行政長官ポストを引き継いだ李家超氏(C)EPA=時事

 

 4月4日、林鄭月娥(キャリー・ラム)香港行政長官は、次の行政長官選挙に出馬しないことを表明した。投票日は5月8日に迫り、すでに立候補受付が開始されていたタイミングでの突然の表明であった。

 出馬すれば再選間違いなしと目されていた現職の政府トップが、選挙公示後に突如出馬しないと表明したら――通常であればこれは「政変」であり、ここから予想される展開は候補者の乱立や組織の右往左往といった選挙ショウのヒートアップである。しかし、そうした事態は一切起きなかった。5月8日、林鄭月娥の下で政府ナンバー2の政務長官を務めていた李家超(ジョン・リー)が、99%を超える得票率で当選を果たしたのである。

 香港行政長官選挙は静かに、北京の筋書き通りに進んだ。しかし、それでもこの選挙は一種の「政変」であったと筆者は考える。林鄭月娥はなぜ出馬しなかったのか、李家超はなぜ選ばれたのか。そして、「一国二制度」の「折り返し点」となる返還25周年を7月1日に迎える香港は、新長官の下でこれからどう変貌してゆくのであろうか。

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