安倍元首相の国葬に向けた警備会議で訓示する大石吉彦警視総監[8月26日]。大石氏は今秋の通常異動で退任と見られ、その後任人事が“奇策”のキモに? (C)時事

 安倍晋三元首相銃撃事件の警備・警護の不手際を巡り、警察庁は検証結果を総括し、中村格長官(59歳/1986年入庁)が辞職した。「警察組織発足以来の最大の不祥事」(警察OB)ゆえに当然のことだが、個別事案による長官の引責は初めてとなった。後任にはナンバー2の次長で露木康浩氏(59/86年)が就任。外部からは比較的スムーズに人事が行われたように見えるが、後進の人事構想は複雑な様相を呈しており、トリッキーな局面も訪れそうだ。

 同期の中村氏と露木氏を続けて長官に就ける異例の人事については、以前、当欄でも触れた。2人はタイプこそ違うが優秀さにおいては甲乙付け難いとの評判で、ともに上司の覚えもめでたかった。やがて「何とか2人を長官に」との機運が高まり、長官OBで内閣官房副長官の栗生俊一氏(63/81年)らが密かに調整。昨年9月に中村氏が長官就任、露木氏も次長に就任して実現のレールが敷かれた。

 もともと中村氏は2年務める予定だったが、安倍氏の事件で露木氏の長官就任が1年前倒しの形になった。何事もなければ、露木氏の「治世」は1年から2年半程度と長期に及ぶ見通しだ。次長には警察庁生活安全局長だった緒方禎己氏(59/87年)が就いてサポートすることになった。実は、この人事が内部の混迷ぶりを象徴している。どういうことか。

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