5歳の少年を救った日本兵

執筆者:2022年10月16日
写真を手掛かりに沖縄で戦没した兵士の人生を辿る ©浜田哲二

 

「捕虜カード」と色褪せた兵士の写真

 この話は2年前、地方の新聞に載った一本の記事が始まりだった。

 沖縄戦の生き残りだった、同県読谷村の比嘉(ひが)カマドさん(享年64)が保管していた「捕虜カード」。当時の米軍が、捕らえた住民らの氏名や国籍などの人定事項を記載した資料で、捕虜が自ら持ち続けていた例は珍しいと、研究者らを驚かせている。カマドさんは52年前に死去しているが、一人息子の盛勝(せいしょう)さん(83)が、「激戦を生き抜いた母が残した記録」として、このほど報道関係者らに公開した――。

 戦争関連のこんな雑報が2020年9月、沖縄タイムスに掲載された。私たち夫婦は毎年、亜熱帯の島々が涼しくなる1月~3月のうちの約2カ月間、本島の中南部で遺骨収集を続けている。私(哲二)が新聞社に勤めていた期間を含めると、20年を超えた。

 ゆえに沖縄戦を伝える報道は気にかけているが、読谷方面で活動する機会は少なく、あまり記憶に残らないニュースだった。が、しばらくして、この記事を執筆した記者から、「折り入って相談したいことが……」との連絡が舞い込んできた。

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