全世界のAT1債発行残高30兆円あまりのうち、欧州銀行による発行は8割を占める(C)AFP=時事

 ブラジルの蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こす。ブラジルを北京に替え、テキサスをニューヨークに替えた言い回しもお馴染みだが、些細な出来事が連鎖を繰り返すうちに大ごとを巻き起こす「バタフライ効果」。米西海岸の中堅銀行の破綻が大西洋を越え、スイスの大手銀行の歴史に幕を下ろす大騒動に発展した。もちろん米国内の金融不安は収まっていない。

 2008年のリーマン・ショックを機に、米欧を中心に世界の金融監督当局は金融の大惨事を引き起こすまいと、様々な規制を導入してきたはずである。それなのになぜ預金を集め、決済を営む金融業務の本丸、つまり銀行の破綻が相次いだのか。米欧の当局者たちは事態の収拾に奔走しつつ、釈明に追われている。今回の危機の際立った特徴は、何にもましてそのスピードだ。

いまや取り付け騒ぎは夜中でも起きる

「24時間足らずの間に起きた、予期せざる巨額の預金の取り付け」。3月28日、シリコンバレーバンク(SVB)などの破綻の原因を追及するために、米上院銀行委員会で開かれた公聴会。証言台に立った米連邦準備理事会(FRB)のマイケル・バー副議長(金融監督担当)は、のっけからこう表現した。狐につままれ、なす術を知らなかった様子がにじむ。

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