カメルーンでは2016年以にフランス語圏に有利な差別的政策が取られ、平和的に抗議した活動家が「反テロ」の名目で拘束された。写真は活動家の解放を求めるデモ参加者=撮影2017年9月22日(C)AFP=時事
 

 世界の耳目がウクライナでの戦争に注がれるなか、3月中旬、国際社会の安全保障に関わる一本の報告書が刊行された。オーストラリアのシンクタンク「Institute for Economics and Peace」が、2012年から刊行しているGlobal Terrorism Index(グローバル・テロリズム・インデックス)2023年版である。過去1年間に世界各地で発生したテロの件数や被害規模に関するデータが示されており、毎年発表されるため、各国の情勢の推移を継続的に把握できる利点がある。

 最新の報告書を読みつつ、筆者が専門とするアフリカ諸国の情勢を思い浮かべると、2001年9月11日の米国同時多発テロ(9・11テロ)以来およそ20年間続いてきた「反テロ」の試みがアフリカにおいては奏功せず、国家による市民の人権抑圧を助長する結果に終わっているケースが多いことを痛感させられる。国際社会は今日、「反テロ」を大義名分とする様々な施策が生み出した強権政治の問題に向き合う時期を迎えているのではないか。

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