欧米金融不安に邦銀が学ぶべき3つの教訓

執筆者:吉澤亮二2023年4月19日
今回の欧米における混乱を分析すると、邦銀にも共通する課題が浮き彫りになってくる[カリフォルニア州サンタクララのシリコンバレー銀行本社=2023年3月13日](C)AFP=時事

銀行は本質的に一般企業より脆弱

「なぜ、金融危機は何度も繰り返されるのか? 安全性と利便性のバランスをとって、利用者の安全を守る建築基準法のような規則はないのか?」

 金融業界とは関係のない理系の研究者から筆者が受けたこの問いは、今回の問題の本質を突いている。2011年の東日本大震災の時でさえ、原子炉の設計に疑義をもたれた福島第1原発は大事故を引き起こしたが、多くの高層建築物は倒壊を免れ人命を守った。これは、設計段階において、躯体の強度計算(安全性)と利用空間の経済性(利便性)を高度にバランスさせ、そして、実直にこの設計を施工した方々の努力の賜物に他ならない。

 このように、社会に重要な影響をあたえる分野においては、安全性と利便性のバランスを取る事が求められる。そして、抜け道的なルールの存在によりこのバランスが崩れると、中長期的には、国民全体の利益を大きく損なう可能性が高い。

 意外かもしれないが、バランスシートで見る銀行の財務構造は、一般の事業法人会社のものと比較すると弱い。例えば、ストレス時に損失を吸収するバッファーとなる自己資本の状況について、銀行と普通の事業会社のものを比較してみよう。

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