「データの戦い」は、戦場でのこうした場面を駆逐してしまうかもしれない (C) Parilov/ Shutterstock.com

 米国と中国の軍事的な対立が深まっているが、その焦点が「データの戦い」であることは、日本ではあまり知られていない。情報通信技術が発達した現代、そして将来の戦争においては、人工知能(AI)に機械学習を行わせるために入手するデータの質と量が鍵となり、その大量のデータを処理する能力が勝敗を決めることになるのだ。

爆発的に増加した戦争の「データ量」

 2000年代初頭のアフガニスタン戦争、イラク戦争において、米軍は「情報過多」の問題に苦しんだと言われている。当時、人工衛星、航空機、様々なレーダーとセンサー、現場部隊などから、多量のデータがクウェートやカタールにある米軍司令部に集められた。しかし、司令部に集められたデータは多種多様で複雑であり、重複、曖昧性、相互矛盾を含んでいた。当時はAIも発達しておらず、こうした多量のデータを処理し、作戦に役立つように変換することができなかった。

 当時に比べ、現在の戦争におけるデータ量は爆発的に増加している。例えば、画像衛星の解像度が向上し、道路標識や道路の状況まで識別できるものもある[1]。さらに、地形や構築物の高さを検出できる人工衛星も存在する。多数の小型衛星から成るコンステレーションは、1日に何度も同じ場所の上空を通過するため、これまで検知することが難しかった短時間の変化を検出することもできる[2]

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