シチューそうそう

執筆者:阿川佐和子2023年5月13日
「泥みたい」な森山シチュー、そのお味は?(写真はイメージです)

 森山良子さんが森山家伝来のシチューを作ってくださった。お宅にお招きいただいたわけではない。私が司会を務めるテレビ番組の企画である。事前にキッチンスタジオで作る工程を収録していただき、後日、スタジオにてその映像を森山さん含めた出演者全員で見つつ楽しむというしつらえだ。映像の中で良子さんは何度も、「簡単なのよー」、「いい加減なのー」と謙遜しながらも、慣れた手つきでテキパキと作業を進めていく。「テレビカメラの前だと緊張しちゃうわねえ」と言いながら、調味料を大胆かつ大ざっぱにパッパカ振りかける。

 料理をすると、その人の本質がわかると言われるが、良子さんの場合、解説は歌うがごとく、動きは踊るがごとく、優雅に楽しげに調理されるが、一つ一つの作業は豪快そのもの。男勝りの思い切りの良さが随所に窺われる。常日頃より何をしても苦にすることのない方だと敬服していたけれど、その料理姿を拝見し、さらにその感を強くした。

 さて、そんな良子様の作るシチューはどんなものかと問われれば、一見、「?」と思うシロモノである。現にこのシチューを初めて食した娘婿殿の小木氏の言葉を借りると、

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