イエレン長官は4月20日の講演で「我々は中国とのデカップリングを目指していない」と語った (C)AFP=時事

 

 ドナルド・トランプ大統領の時代に先鋭化した米中対立は、ジョー・バイデン政権になっても緩まなかった。リーマンショックによるGFC(Global Financial Crisis、国際金融危機)の際は、G20の首脳会合が繰り返されて、世界中が手を携えて対応にあたったが、COVID-19のパンデミックに際して、そうした国際協力の高まりはなかった。そして、ロシアのウクライナ侵攻が起こって本格的な分断の時代となり、それが早期に修復されそうにない現実を直視しなければならなくなっている。分断化は経済、金融市場にも大きな変化をもたらす。その変化に直面して、欧米の政策決定者たちは、新しい経済運営の課題を見極め、対応のグランドデザインを描き始めている。

1.次の政権でも緩みそうにない米中対立

 米国の対中姿勢には、二つの流れがある。第1は、冷戦の時代にソ連に対抗するため始まった、中国との距離をつめ、親和を求める姿勢である。第2は、覇権を脅かす存在を許さないとして、強硬に対決で臨む姿勢である。20世紀に覇権を得てからの米国は、日独の軍事的挑戦を退け、ソ連との冷戦に臨み、日本の経済拡大からの挑戦も退けた。そして今、世界最大GDP(国内総生産)産出国の座を中国と競おうとしている。

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