アイルランドを歩いて日本の連邦制を考える

執筆者:北岡伸一2024年1月3日
University College Dublinでの講演の様子(JICA提供、以下同)

 私はこれまで世界の118カ国を訪れてきた。これほど行くと、ぜひ行きたいと思う国はだんだん減ってくる。その中で気になっていたのがアイルランドである。そのアイルランドのダブリン国立大学(University College Dublin)で講演をしてほしいという依頼があったので、喜んで行った。アフリカ4カ国訪問の直後の日程だったので、アフリカ旅行とアイルランド行きをくっつけたわけである。こうしてアイルランドが、私の119番目の国となった。

ラフカディオ・ハーンの関心

 アイルランドが気になっていた理由の一つは、ラフカディオ・ハーンである。彼は日本のことを実に深く理解し、愛した人だった。明治大正期、少なからぬ欧米人が、アジアのユニークな文化としての日本や、急速に勃興しつつある日本に対して関心を抱いた。ハーンの場合は、いずれとも異なっていて、それらの奥にある日本の精神的なものに対する強い関心や愛情が基底になっている。彼の主著である『知られぬ日本の面影』(Glimpses of Unfamiliar Japan)というのは、まさに、彼の関心の所在がどこにあったかを示すタイトルとなっている。

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