脱炭素化の重要性は変わらないが、総合的なコストの勘案も求められる[アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)首脳会合で発言する岸田文雄首相=12月18日、首相官邸](C)時事

「エネルギー基本計画」は、2002年に制定されたエネルギー政策基本法に基づいて、概ね3年程度毎を目途に改定が行われてきた日本のエネルギー政策の基本・骨格を定める極めて重要な長期エネルギー戦略である。2003年の第1次エネルギー基本計画を皮切りに、その時々の状況変化を反映して累次改定が実施され、現行の第6次エネルギー基本計画は、2021年10月に閣議決定された。

 2024年には、現行計画の議論の際には顕在化・深刻化していなかった課題が多数浮上する内外の新情勢の下で、次期エネルギー基本計画策定に向けた政策検討が始まると予想されている。以下では、それら新情勢を踏まえ、新たな基本計画の検討にあたって欠かすことのできない論点を、筆者の個人的な考察を基に、整理し提示することとしたい。

はじめに.新情勢の下で「S+3E」の同時追求する次期計画

 エネルギー基本計画の策定においては、「S+3E」の同時達成を目指すことが基本原理として確立されている。これは福島第一原発事故の反省を踏まえ、安全性(Safety)を大前提としつつ、エネルギー安全保障(Energy Security)、環境(Environment)、経済効率(Economic Efficiency)の3つの「E」を同時に達成するエネルギー政策を定める、ということを意味する。

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