「ウクライナ停戦論」の表と裏

執筆者:鶴岡路人2024年2月16日
停戦提案は戦闘の代替ではなく、戦闘の延長線上に存在する[南部ザポリージャ州を視察するゼレンスキー大統領(中央)=2024年2月4日](C)AFP=時事 / Ukrainian Presidential Press Service

 ロシアによるウクライナ全面侵攻の開始から2年を迎えるなかで、即時の停戦を模索するべきだとの声がさまざまに上がっている。日々ウクライナの人々が犠牲になり、国土が破壊されている以上、1日でも早い戦闘の終結を望むことは当然である。加えて、ほとんどの戦争が、停戦交渉を経た何らかの合意によって終結することを考えれば、停戦交渉に関する議論がなされること自体は特別なことではない。犠牲や破壊を終わらせるべきだというのが停戦論の「表」の目的である。

 しかし現実には、今回の侵攻に関して、双方が受け入れ可能な停戦の条件は現時点で存在するのか、していないとすればそうした条件を今後いかにつくることができるのか、そして停戦が実現したとしてそれを維持できるのかといった問題を解決できる可能性が高まっているとはいえない。当事国が受け入れる可能性のほとんどない条件をかざして即時停戦を唱えても停戦には近づかない。

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