核使用シナリオを含む形で米韓合同軍事演習がこの夏に行われれば、朝鮮半島の軍事的緊張は最高潮に達するかもしれない[大陸間弾道ミサイル「火星砲18」の発射準備状況を視察する金正恩委員長=朝鮮中央通信発表、撮影日・場所不祥](C)AFP=時事/KCNA VIA KNS

「金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は戦争に踏み切る戦略的決断を下した」との警告が2024年初めに著名な北朝鮮問題専門家、ロバート・カーリン、ジークフリート・ヘッカー両氏から発せられた。二人の診断に対しては既に様々な異論――戦争開始は米韓両国の反撃による金正恩体制の終焉を招くため、金委員長はそうした判断はしない、北朝鮮によるロシアへの砲弾やミサイルの提供は戦争準備に反する動きである等――が示されたが、戦争には至らないまでも南北の軍事的衝突の可能性が高まっているという点で、多くの専門家の2024年の情勢見通しは一致している。本稿では関連する2つのリスクについて検討した上で、それらに対して日本はどう備えるべきか、関係改善が進む韓国との連携を念頭に考えてみたい。

「核のリスク」の意図せぬエスカレーションを防ぐ

 第1に備えるべきは「核のリスク」である。朝鮮半島で核戦争の危険が差し迫っている、ということを言おうとしているのではない。北朝鮮と韓国が共に核使用に関するレトリックとそれに伴う措置を加速化させている中で、この地域の安全保障環境が一層不安定かつ不透明になっており、不測の事態を招きかねない状況にあることを指摘したいのである。

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