江東総合温室の操業式でテープカットする金正恩国務委員長の後ろには娘が映り込んでいるが、その顔が欠けている(『労働新聞』HPより)
 

 3月14日付は、朝鮮人民軍の戦車兵大連合部隊による訓練競技を金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が指導したとの記事であった。4日の国防省代弁人談話で示唆された通り、米韓合同軍事演習(4日~14日)に対しては抑制的な姿勢が一貫され、訓練に対して訓練で対抗したばかりか、記事に米韓への名指し批判が見られないことが特徴的であった。

 16日付1面から3面は、金正恩が平壌郊外の江東(カンドン)郡に建設された温室の竣工・操業式に出席したとの報道であった。この種の記事は、冒頭ないし前半で金正恩が「指導した」「参席した」と言及するのが常であるが、今回は「金正恩」についての言及が第1面の末尾にようやく登場している。

 娘とのツーショット写真も数多く掲載されたものの、記事中では「お子さま」が主語になっておらず、「敬愛する金正恩同志が愛するお子さまとともに竣工及び操業式場に到着されるや、爆風のような『万歳!』の歓呼の声が天地を震撼させた」と述べられるにとどまった。ただし、文中には「嚮導の偉大な方々が、党と政府、軍部の幹部とともに江東総合温室をご覧になった」との一文があった。父娘を指すと見られる「嚮導の偉大な方々」という表現は初出である。また、1面トップの大きな写真には金正恩がテープカットしている後ろに娘が映り込んでいるが、その顔が欠けている。娘が個人崇拝の対象に至っていないことを示す構図ではあるが異例である。

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