日銀のアテが付かない新時代

Foresight World Watcher's 7Tips

執筆者:フォーサイト編集部2024年3月23日
「低金利、低成長、高債務は消え去らない」と英エコノミスト誌[岸田首相との面会後、記者団の質問に答える日銀の植田和男総裁(中央)=2024年3月19日午後、首相官邸](C)時事

 今週もお疲れ様でした。3月18~19日の金融政策決定会合を経て、日銀が金融正常化へ向けた一歩を踏み出しました。日本株の史上最高値には関心薄だった海外メディアも、「世界最大の金融政策の実験」(英エコノミスト誌)の幕引きには注目せざるを得ないようです。

 確かに、マイナス金利解除のみならずYCC(長短金利操作)やETF(上場投資信託)の買い入れ停止など、「異次元緩和」のメニューをほぼ総浚いで撤廃する決定は、かなり思い切ったように思われます。決定事項の多くは市場も織り込み済みで、ひとまず動揺はありませんが、とりわけ見逃せないのは将来の金融政策の方針説明、いわゆるフォワードガイダンスが廃止されたことではないでしょうか。

 そもそもフォワードガイダンスは、植田和男総裁が審議員時代に導入した「時間軸効果」(条件が整うまで金融緩和を続けると宣言することで、市場に安心感を与え、中長期金利を安定に導くこと)の発展形と言えるもの。これまでは「要するに緩和維持でしょ?」と市場はアテを付けることができましたが、今後はそうも行かなくなります。市場との思わぬ認識の食い違いが波乱を招くのをどう防ぐか。植田日銀の難しい舵取りは続きます。

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