中国が七月一日から国内で販売されるすべてのパソコンに搭載を義務付けようとしていた有害サイトの検閲ソフト「グリーン・ダム」は、実施前夜に突然義務化の延期が発表された。延期の決定を受け、中国のネットユーザーや外資系PCメーカーの多くがホッと胸をなで下ろす中、ソニーだけが一人頭を抱えている。 この検閲ソフトは、中国工業情報化省が「青少年を有害情報から守る」などとして六月上旬に義務付け方針を公表した。しかし、その直後から中国のネット上では激しい反対運動が起こり、反対派のネットユーザーが立ち上げた掲示板には、六月だけで一万四千件を超える抗議署名が集まった。 また、プライバシーや自由な情報の流通を重視する欧米諸国は、国が指定した一種類のソフトを強制する制度自体を問題視し、撤回を要求、日本政府も貿易の阻害要因になりかねないという観点から欧米と歩調を合わせ、中国政府に懸念を伝えた。さらに、北京の日本商工会議所や米国商会、EU商会など日米欧の民間団体も、工業情報化省や温家宝首相宛に制度の再考を求める要望書を連名で提出した。 今回の延期決定は、こうした「内外の反発の大きさを考慮した中国政府がひとまず撤退した形」(地元メディア記者)だ。だが、中国政府はあくまでも義務付けを猶予しただけ。「政府は国内メディアにグリーン・ダムの義務化に賛成するよう指示しており、タイミングを見て義務化を実施する可能性もある」(同)と指摘する。

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