キリン・サントリー「前向き統合」の吉凶

執筆者:新田賢吾2009年9月号

ともに「勝ち組」企業の対等合併。グローバル市場を狙うためには良い判断だが、企業文化の違いを克服できるのか。 経営統合を目指すことが明らかになったキリンホールディングス(HD)とサントリーHD。「グローバル市場での勝ち残りを目指す前向きな統合」と両社の決断を評価する意見が経済界では多いが、「意表を突く組みあわせ」と驚きや懸念を隠さない関係者も少なくない。日本の様々な業界の同業他社の中で、およそこの二社くらい歴史と性格の異なる企業は少ないからだ。統合で誕生する新社がその違いを乗り越え、真のグローバル・プレーヤーになれるかは、単にキリン、サントリーの問題にとどまらず、国内需要の着実な縮小という深刻な不安に直面する多くの日本企業にも関わってくる。 キリンは三菱グループの一社で、日本の食品業界を代表する名門企業。二〇〇一年にアサヒビールに抜かれるまではビール類(発泡酒など含む)で半世紀近くシェアトップを維持してきた。最盛期の一九七六年には六三・八%のシェアを獲得、独占禁止法による分割の噂も出るほどのガリバー型寡占企業だった。経営手法は手堅く、消費者の信頼感も高いが、柔軟性に欠けた優等生的な面も否定できない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。