ドバイでは初めての地下鉄路線「レッド・ライン」が開通した。鉄道・地下鉄の発達していない中東としては画期的な出来事であり、「二〇〇九年九月九日九時九分九秒」に合わせて開通式が華やかに執り行なわれた。世界一高いビルとなることを目指して建設中のブルジュ・ドバイ(ドバイタワー)も、工期が延びていたが、九月中には先端部のクレーンが降ろされ、十二月二日のUAE(アラブ首長国連邦)建国記念日に合わせて公開される見通しである。年初に八百十八メートルは超えたとされるが、最終的に何メートルの高さになるかは依然として公表されていない。 しかしドバイの開発ブームの中核であった不動産市場は低迷を続け、回復の見通しは立たない。ブルジュ・ドバイや地下鉄プロジェクトによるインフラ整備が、どれだけドバイの実質的な価値を高めるかが見ものである。七首長国の「スポンサー」 皮肉な見方では、「オバマ政権誕生がドバイの不動産価値を下げた」という議論がある(ドバイ『ナショナル』紙八月十日付)。オバマ政権が対話路線を取って中東地域の安定化を図れば、打撃を受けるのはドバイだという論理である。例えば、経済制裁を科されたイラン企業はドバイに置いたトンネル会社を通じて国際取引を行なう。イラクやアフガニスタンの混乱により、ドバイに資金や拠点が逃避してくる。ドバイの幹線道路ザーイド通りを行けば「軍閥ビル」「政商ビル」が立ち並ぶ。多国籍企業は紛争終結後のビジネスチャンスを狙ってドバイに「前線拠点」を置き、イラクやイランの内情を窺う。中東地域の不安定や、大国サウジアラビアの閉鎖性も、そこに隣接した「安定の小島」「解放区」として売り出したドバイの価値を高めた。もし中東全域が安全で開放的になれば、ドバイの価値は失われてしまいかねない。

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