「EU大統領」誕生で欧州はどう変わるか

執筆者:天城晴彦2009年12月号

リスボン条約がついに発効する。これまでは経済分野が中心だったが、政治・外交や治安・内政でもEUの統合が進むことになりそうだ。 欧州連合(EU)の新たな基本条約である「リスボン条約」が十二月一日に正式に発効する。フランスのジスカールデスタン元大統領を議長とする諮問会議が「共通憲法」の策定を始めてから八年近く。欧州統合の将来像をめぐる加盟国の対立や、三度にわたる国民投票での批准否決を乗り越え、ようやくEUは新体制に移行する。EU大統領(欧州理事会の常任議長)やEU外相の創設、政策決定の効率・迅速化、加盟国の再拡大などが柱であり、EUが超国家機関に脱皮するための布石が盛り込まれている。政治・外交も統合へ 新生EUの目玉となるのは大統領職の創設だ。EUの最高意思決定機関である欧州理事会(首脳会議)の常任議長を務め、対外的にもEUの「顔」としての役割を担う。現在、欧州理事会や閣僚理事会などを通じてEUの運営を仕切るのは議長国。加盟二十七カ国が六カ月ごとの持ち回りで務める仕組みだが、議長国によって政策運営の方向性が微妙に食い違い、EU政策の一貫性が確保されないうえ、中小国が議長だとEUをまとめきれないという問題があった。実際に新規加盟の中小国であるチェコがEU議長国だった二〇〇九年上半期は、チェコの政情不安もあって、目新しい政策はほとんど採られていない。議長国から役割を引き継ぐ形となるEU大統領の任期は二年半で最長五年まで。EU運営の安定度が高まることが期待できる。

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