ワシントン滞在の終盤に入ったが、所用により一時日本に戻った。ワシントンを発つ直前に、ウッドロー・ウィルソン・センターで研究成果の一部発表を行なった。十月はじめにワシントンで調査を始めたころは、「オバマ政権の中東政策」という研究課題を示すと、「評価するには時期尚早」という反応が多かった。しかし十二月半ばになって、近辺の大学・研究機関や政策シンクタンクで、オバマ政権の中東政策を検証する趣旨のシンポジウムや講演が次々に開催されるようになっている。 十二月一日にオバマ大統領がウエストポイント陸軍士官学校で講演し、アフガニスタンへの増派を含む新戦略を発表したことが大きな区切りとなり、中東政策や外交政策全体について、オバマ政権の初年度を評価する機運が高まっている。 私の見立てでは、オバマ政権の一年目の中東政策の特徴は、「オバマ自身の魅力」の影響力に依存した、「言葉の力」への確信とも言うべき自信に支えられていた点である。 オバマが大統領として最初の単独テレビ・インタビューを与えたのは、アラビア語国際衛星放送局アラビーヤだった(二〇〇九年一月二十七日放映)。ここでオバマは「コミュニケーション」という言葉を三度も使った。「私の仕事は伝えることだ」「われわれの用いる言葉が、重要だ」と述べて、米国とアラブ世界・イスラーム世界との間の良好なコミュニケーション回路設立こそ自らの使命と自任していることを示した。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。