進化するアフリカビジネスの最前線

執筆者:平野克己2010年3月号

資源高の追い風を受けるアフリカだが、政治の腐敗や公共サービスの欠如は以前と変わらない。アフリカビジネスで問われるものとは――。 昨年マダガスカルに行ってきた。住友商事を中心とした国際コンソーシアムが進めている「アンバトビー・プロジェクト」の現場を訪れるためだ。GDP(国内総生産)が九十三億ドル(二〇〇八年)で一人当たりGDPも五百ドルに満たない最貧国マダガスカルに三十七億ドルを投下して、ニッケルとコバルトの一貫生産体制を構築しようという大事業である。すでに内陸部の鉱山、沿岸部の精錬工場、トアマシナ港の拡張工事、これらを結ぶ搬出路の建設が始まっている。完成すればマダガスカルは世界のニッケル生産の三・八%、コバルトの八・三%を占めるようになり、経済規模が倍増する。日本としてもニッケルの安定供給源を一つ確保できる。現下日本最大の対アフリカ投資であるばかりか、世界的にみても最大級の事業である。 近年成長が著しいアフリカ経済の原動力は、このようなメガ・プロジェクトだ。だが、メガ・プロジェクトは受入国の経済を大きく変えてしまうことから「企業の社会的責任(CSR)」が重く問われる。国連は二〇〇〇年に、主に投資者を想定して開発途上国での行動規範を設定している。雇用基準や環境配慮、人権尊重、汚職排除を謳ったもので「グローバル・コンパクト十原則」という。世界中で六千を超える企業が加入し、日本でも〇一年に加入したキッコーマンを皮切りに現在百七の団体・企業が参加している。グローバリゼーションが進展するなかで、途上国ビジネスは大きく変わろうとしているのだ。住友商事は昨年これに参画し、アンバトビー・プロジェクト発足時にマダガスカルへの教育支援を約束した。

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