指導者層の交代と新たな価値観の台頭

執筆者:畑中美樹2010年4月号

 中東の情勢は、常に世界の動きと連動しながら、他方で内在する固有の要因によっても突き動かされてきた。逆に、中東の変動が世界の情勢に大きく影響を与えることも少なからず起きた。今後二十年の中東においても、基本的には、これら三つのベクトルが相互に絡み合いながら影響を与えて行くことになろう。 第二次世界大戦後の中東を振り返ってみると、最も大きな影響を与えた世界の動きは「米ソ冷戦」「東西対決」という構造であった。その崩壊以降では、特にここに来て顕著となった中国を中心とする「新興国」の台頭が大きな影響を与えている。 中東固有の要因では、一九四八年のイスラエルの建国と七九年のイラン・イスラム共和国の誕生が域内情勢を規定した。前者の結果、アラブ・イスラエル紛争が常態化し、その産物としてのアラブ・ナショナリズムの勃興があった。そして、その衰退と入れ替わるように登場したのが革命イランに触発されたイスラム復興主義である。さらに、九〇年代に入るとこれを押さえ込もうとする西側世界への対抗手段としての聖戦主義が、テロリズムという衣をまとって表舞台に躍り出ている。 この間、エネルギー面では、石油権益の奪取を巡る産油国と欧米巨大石油資本の戦い、その帰結としての石油輸出国機構(OPEC)の誕生による原油価格の高騰、さらに、その反動としての省エネ・脱石油政策の遂行によるOPECの弱体化が進行する中で二十一世紀を迎えた。

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