「菅降ろし」を仕掛ける小沢氏の「2枚の駒」

執筆者:野々山英一2010年7月16日

 参院選の惨敗で、民主党は政局に突入した。照準は9月5日に行なわれる見通しの党代表選。主役は、やはり小沢一郎前幹事長(68)だ。菅直人首相(63)から「しばらく静かに」と言い放たれ、しばし冷や飯を食ってきた小沢氏だが、代表選を機に完全復権を目指す。
 周辺には小沢氏自身の代表選出馬待望論もあるが、その可能性は低い。資金管理団体「陸山会」による土地購入をめぐる2004、05年分の政治資金規正法違反事件で、検察審査会の2度目の議決が月内にも下されるからだ。起訴議決が出れば自動的に強制起訴される。別の審査会が審査していた07年分については7月15日、「不起訴不当」の議決が下された。今後、小沢氏をめぐる「政治とカネ」報道は再び高まりをみせるのは間違いない。その中で出馬するのは、いかに剛腕でも難しい。今回、小沢氏は子飼いの候補を立てて、菅降ろしを目指すことになる。では誰に、白羽の矢が立つか。候補は原口一博総務相(51)と海江田万里衆院議員(61)だ。

「ラグビーボール」と「元首相候補」

 原口氏は党内で「ラグビーボール」と呼ばれる。その時の空気で言動をひるがえすのが、どちらに転がるか分からないラグビーボールに似ているという意味だ。その一方で、地方分権、通信行政などに関しては一家言持つ政策通でもある。
 海江田氏はテレビ・コメンテーターとして活躍した後、政界入り。税金党を振り出しに、日本新党などを経て民主党に合流した。1996年1月には第3極「市民リーグ」の代表委員として首相指名選挙に臨み、衆院本会議で5票獲得している。つまり14年前に「首相候補」を経験している。
 2人には共通点がある。1つ目は「焦りと上昇志向」。党内の次代のホープは岡田克也外相(57)、野田佳彦財務相(53)、枝野幸男党幹事長(46)ら7奉行ということで衆目が一致している。原口、海江田の両氏は、その次の8番目グループに位置する。7奉行に実力では負けないと自負するが、今のままでは出番はない。それを自覚した2人は「8番目」から一気に浮上する時を狙っている。
 2人は、小沢氏と近い点も共通する。原口氏は、細野豪志幹事長代理(38)、松本剛明衆院議運委員長(51)とともに「(小沢氏への)ごますり3人衆」と揶揄されてきた。6月以降は、ラグビーボールぶりを発揮して菅氏を支援してきたが、参院選敗北後は、菅氏の財政政策に批判的な言動を始め、小沢氏との修復に余念がない。
 海江田氏は党内では鳩山由紀夫前首相(63)の側近として知られてきたが、昨年、党選挙対策委員長代理に起用されてからは小沢氏の薫陶を受け、鳩山氏と小沢氏の連絡役も務めるようになった。

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