米国の圧力によってスイスの銀行守秘義務に風穴が開くか注目されていたスイス銀行最大手UBSの顧客情報提供問題。米国とスイスの二国間協議の結果、税金逃れの可能性があるUBSの米国人顧客の口座情報を米税務当局に引き渡すことで合意したはずだったが、今年一月、スイス連邦行政裁判所が情報提供を違法とする決定を下した。スイス司法の決定に、米国の当局だけではなく、スイス政府も当惑している。  スイスの法律では、税金を意図的に払わない「脱税」は犯罪だが、申告漏れなどの「税金逃れ」は犯罪ではなく刑事罰の対象にならない。UBSの米国人顧客の場合、スイスの口座にある資金は「税金逃れ」は疑われるものの、「脱税」という犯罪を犯して得た資金には当たらないと判断。犯罪にかかわった資金でない以上、米国人顧客の口座情報を提供することは、顧客情報の第三者への開示を禁じていた銀行法の「銀行守秘義務」規定に違反するとしたのだ。  二〇〇八年以来、米国はスイスの銀行守秘義務を攻撃。UBSが米国の資産家の口座をスイスに開設、脱税を幇助したとして、訴訟に踏み切った。欧州連合(EU)などからも銀行守秘義務の撤廃を求められたスイスは、昨年三月になって銀行守秘義務の運用を見直す方針を発表。スイス国外に住む外国人の口座について、脱税の疑いがあるとして居住国からの照会があれば情報提供に応じる姿勢に転換した。

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