TPPから始まる東アジアの陣取り競争

執筆者:加瀬友一2010年11月12日
TPP参加反対を訴える農林水産業関係者ら(c)時事
TPP参加反対を訴える農林水産業関係者ら(c)時事

 TPP、FTA、EPA、APEC……。英字の略語が飛び交う報道は、もういい加減に勘弁してほしい。そう感じている読者は多いのではないだろうか。通商問題の報道は、まるで横文字の専門用語の吹き溜まりのようだ。TPPをめぐる論争が永田町と霞が関で過熱する一方で、その本質を理解している者は、一般国民に限らず政治家や官僚にも多くはないだろう。

 TPPとはTrans–Pacific Partnershipの略。日本のマスコミ報道では「環太平洋経済連携協定」などと訳している。太平洋を取り囲む国々で自由貿易の仲間を作り、経済で緊密な提携関係を築こうという構想である。現在の推進役は米国のオバマ政権だ。

 日本の政界は、降って湧いたようなTPP騒動で大荒れだが、この構想自体は新しいものではない。原型となる協定は「P4」と呼ばれ、既に5 年以上前の2005年6月に誕生していた。P4はPacific 4(太平洋の4カ国)の略である。菅直人首相が10月に始まった臨時国会の所信表明演説で言及して以来、突然TPP論議が高まったように見えるが、それは日本が今までこの枠組みに全く目を向けていなかったからにすぎない。

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